Hello, we are "NOWHERE”. vol.0
全3回にわたって、ブランド、建築、食、コーヒーなどさまざまな領域からプロジェクトに関わるプロフェッショナルたちが「これから、ここで何が始まるのか?」についての構想や妄想を語らう本企画。
今回はイントロダクションとして、BLUE BOTTLE COFFEE JAPAN代表のリョウさんを交え、”NOWHEREのはじまり” について話しました。
vol.0 思いごと受け継ぐ、「王道」の引き継ぎ
中目黒にSANUを。そのきっかけは、SANU共同創業者である本間(ヒロ)と福島(ゲン)の友人、リョウさんが運んでくれました。世代を超えて人が集った、「思いの詰まった場所だから」こそ「誰でも良かったわけじゃない」との言葉とともに引き継がれた物件から、新たな物語が始まります。
Friends & Guest : 伊藤諒 (リョウ)
BLUE BOTTLE COFFEE JAPAN代表。SANU代表の本間とは、アウトドア&飲み友達。ブラジリアン柔術道場を通じて関係性を深めたという話も。
———— やっぱり思いを込めて建てたものって、
「誰かの思い」から「誰かの思い」に
ちゃんと渡っていって欲しい。
その考えでいくと、実は王道の受け渡し方なのかな。(ヒロ)
ヒロ
どこから話そうかな。我々ふたりの出会いの話をすると、おじさん6人でサウナに入る会っていうのが……。
リョウ
一応、「自然とサウナを愛する人の会」っていう名前がね。
ヒロ
そうそう、そうなの。「自然とサウナを愛する人の会」が両国で開催されて。そこで、『木の命、木の心』っていう日本最後の宮大工の西岡さんの(書籍の)話でめちゃくちゃ盛り上がって。
リョウ
同世代で読んでるヤツ、そんなにいないからね。
で、その日俺、早めに帰ったんだけど、「ヒロともう少し話したいな」ってナンパしたの。「ブルーボトルでお茶しない?」って。
ヒロ
ね。そこからは一緒に遊んだり、話したりっていうのが続いていて。
で、リョウさんからこの建物(“NOWHERE”になる場所)の話を最初に聞いたのは、実は俺じゃなくてゲン(SANU共同創業者 福島弦)なんだよね。
リョウ
コロナも明けて、ここでカフェをやっていくのがだんだん難しいなと思っていたところで。
リョウ
オーナーが個人でやってるから、ここ。リーシングもやってないし。できるならそのサポートもちゃんとしたいな、と思ってるくらいの時に、ゲンと飯食って。で、「この次、ちょっと気が重いミーティングなんだよね」ってところから、この建物の話をしたの。オーナーさんに話にいくタイミングだったから。
そしたら、ゲンが「ちょっと興味あるかも」って。
“NOWHERE”ってアイディアは、おそらくその当時(1年前)にはなかったと思うんだけど。
ヒロ
なかったね。SANUのラウンジを作りたい、みたいな話だった。
リョウ
……って話を、「ヒロがしてたな」ってその場で聞いて。その次の日か、次の次の日くらいにゲンが見に来てくれて。その翌週にヒロも見に来てくれて。
で、早かったよね。ふたりとも「ここ、いいね」ってなって。
ヒロ
そう。SANUの角度から話すと、えっとー。
2年半くらい前から俺ら、ラウンジをやりたいってずっと思っていて。特に、東(東京)側を中心に建物を探してたんだよね。ずっと探し続けてたんだけど、ぐっとくるものが本当になくて。やっぱり天高欲しいし、光が入って欲しいし、風が抜けて欲しいし、音も出したい、ひらけていて欲しい。
そういう条件を満たす建物ってあんまりない……じゃない?
リョウ
あんまりないね。
ヒロ
で、物件探しをちょっと忘れたくらいの時だったんですよ。……に、急にこの話がきて。見に来たら、本当に一目惚れだった。
リョウ
ここは元々、建物オーナーのお父さんが機械の備品工場をやってて。昔はその業者さんも含めていろんな人がたくさん来てた場所で。
で、引退されて閉業して、全然人が来なくなったから、「もっと人が来る、もっと前のように人が来るような場所にしたい」ってので、うち(ブルーボトルコーヒー)が入って。
そういう、この場所にある「思い」みたいなものってやっぱり大事。だから、(次に入るテナントやテナントオーナーは)誰でもいいわけじゃないし、ここでなんかお店とかを普通にやられてもなって。
リョウ
「やられても」って、誰目線? って話なんだけど(笑)
ヒロ
うんうんうん。
リョウ
そう思ってる時に、「あ、なんかSANU入ってくれるならすっげえいいかもな」みたいな。
ヒロ
いや、あるんだよ。こんだけ建物を、数、見てると、愛されて作られた建物か? そうじゃないのか? って。
で、ここはそれをすごい感じたし、しかも工場として長く……今のオーナーさんの、お父さんの代からずっと続いている。かつ、今も、今でも建物が活躍していた時代みたいに、「人がここに集って欲しい」っていう思いをオーナーさんがもっていること自体が貴重だし、大事だし。
それを蔑ろにしないというか、大事にしていきたいみたいなところ。自分たちもそれをフォローするぞっていうのが強くあるよね。
リョウ
しかもたまたま、(オーナーさんご家族が)SANU会員だったし。
ヒロ
そーうなの!(笑) たまたまSANU会員だったわけ。そんなことってない。今でこそね、SANUはおかげさまで広まってきましたけれども、この話をしていた当時は会員数数百人くらいしかいないわけですよ。
東京に人、どれだけ住んでるの? そのうちの何割がSANU会員なの? みたいな。
リョウ
どんな確率よ! って。
ヒロ
で、そんな偶然が重なって、「これは縁ですね」と。
リョウ
本当にね。
ヒロ
で、結果ね、オーナーさんにも快くしていただいて今に至るんだけど。
(リョウさんとの)この関係性もさ、そもそもビジネスパートナーじゃなくて、こう……友達から始まっていて。友達が大事にしていたものを貸してもらう、というか、受け継がせてもらうみたいなのがベースとしてあるから。そういうテナントのチェンジってめちゃくちゃ珍しい。
普通ね、解約して、不動産が借り主を新たに募集して、それで入るっていう。ただそれが繰り返されているのが大都市だと思うんだけど。でも、そもそも建物が少なかった時代とか、今でも地方だとそうだけど、やっぱり思いを込めて建てたものって、誰かの思いから誰かの思いにちゃんと渡っていって欲しいって考えでいくと、実は王道の受け渡し方なのかな、みたいなのが。
リョウ
たしかに。
ヒロ
翻ってね。
リョウ
俺も、「本当にこんなことってあるんだ」ってしばらくの間、思ってた。この間キックオフに呼んでもらって、会場に来るときくらいまでは、ちょっとふわふわしてたんだよね。
ヒロ
本当にね。いやー別に、スピるわけじゃないけど。運命ってあるのかなって(笑)。
リョウ
ふふっ(笑)
ヒロ
そう思っちゃうくらい。渡りに舟じゃないけど。もう奇跡的なことが何個も重なって。で、結果、すごく自然に俺らがここに関わらせてもらってるから。
リョウ
なんかこう、俺の目線からすると、やっぱり約束事として、(場所を)借りて、それを満期でできなかったっていうのがすごくやっぱり悔しいし、申し訳ない気持ちがあった。オーナーさんに、「これまで本当によくしてもらったのに」みたいなところもあって。
リョウ
でもヒロとゲンが来てくれて……SANUが「いけるかも」ってなった時に、本当に、なんか「救世主じゃん!」みたいな。
で、建物だけじゃなくてコミュニティみたいなものを考えながら、「場所」を作ってくれる人に手渡せるなら……って。開き直るわけじゃないけど、うちらブルーボトルが無理をしながらカフェをやり続けることよりも、いい進化なんじゃないか、いい次のステップなんじゃないか、と思うこともあって。
だから本当に、これが、全部タイミングも含めて合ったのは奇跡的だし、ありがとうって感じ。
ヒロ
いやー……さあ。時々思うんだけど。自分で言うのもなんなんだが。
めちゃくちゃ本気で何かやってると、時々神様がさあ、プレゼントみたいなのをさ。授けてくれるじゃない。
リョウ
するする(笑)。
ヒロ
あれって本気で仕事してたり、本気でなにかやってないと貰えない気がしてて。それはもちろんその論理的に繋げていけば、いろんな要因があるのかもしれないよ?
その……人が応援したくなるとか、そこに注ぎ込む時間が多くて、チャンスが多くなるとか。色々あるのかもしれないけど、やっぱり本気で突っ込んだ時こそ見える道みたいなのが、やっぱり今までの仕事人生の中でも何度か、節目で起きていて。今回もそのひとつのような気がして。
それで迷いなく、ここでSANUのラウンジ“NOWHERE”をやろうという決意が生まれたよね。
リョウ
いやーいい……。いい場所になるね。
———— 何者でもない、ただの岩なわけじゃん。
でもその形をちょっと観察して、自分の座り方を変えるだけで椅子にもなれば、テーブルにもなる。
そんなことを少しでも思い出しながらリラックスできる空間、っていうのがデザインコンセプトにも繋がりますね。(ヒロ)
リョウ
“NOWHERE”のコンセプトって、カフェで考えていることともなんか似通うものがあるというか。
「ここがどこであるか」という「場所」にフォーカスするというよりは、「そこに流れている時間」にフォーカスしているって考えると、実は繋がりがあるなって。
ヒロ
はいはいはいはい。そうだよねえ。
なにか媒体を欲するじゃないですか、私たちは。話す時に。ただ何もなく話すって実はちょっと面映ゆい、はずかしいとか、ハードルが高いことも多いと思うんだけど。
そこにコーヒーがあると、美味しいワインがあると。それだけで話すのが……ねえ。
リョウ
ゆるくなると言うか。
ヒロ
で。しかも美味しかったら、話がいい方向にいくじゃない。
リョウ
気分も上がるし。
ヒロ
本当そうなんだよね。
そのためのハブを作ってるってことだと思ってるけど。だから、(ブルーボトルコーヒーと)やってることは似てるんだろうね。
リョウ
そうだね。そういう場を作る……そういう場って、なんかどんどん減ってきてるじゃん。目的性のある場所はたくさんあるけど、ご飯を食べに行くのもそうだし、働きに行くのもそう。あんまりなんも考えずにふらっと来て心地いい場所みたいなのになると、ないよね。
自然の中にいけば、そういう場所ばっかりだけども。
ヒロ
そうだね。
リョウ
「この岩の上好きだから、ちょっと休憩していこうかな」とか。
そういうのが都内にはあんまりないから。
ヒロ
まさに。いい話をしてもらって。それが“NOWHERE”のデザインコンセプトなんですよねえ。
ヒロ
リョウさんは、山登るからイメージしやすいと思うんだけど。
やっぱり山に登ってる最中に、石の上に腰掛けてなんか話したり、コーヒー飲むのって最高だし、山歩いている最中に木の根元に腰掛けてちょっと休憩する。みたいな雰囲気で、ここには「地球の質量、大地のかけら」と題して、我々は大きい岩を3つ持ってきて、木を植えるんだけども。
もちろん自然の中のモノを借りてくるのである種、人工的だし、ある種、擬似的なものではあるんだが。それを通して自然の中で休息する……というか。
「岩」って椅子でもなければ、テーブルでもなければ、何者でもない。ただの岩なわけじゃん。でもその形をちょっと観察して、自分の座り方を変えるだけで椅子にもなれば、テーブルにもなる。
自然界に在るモノって、もともとは、そうやって何にでも使えるはず。そんなことを少しでも思い出しながらリラックスできる空間っていうのが、デザインコンセプトにも繋がりますね。
リョウ
この辺りってさ、小さい子どものいるお母さんとかすごく多い。それで考えるんだけど、東京で育つと、「これって別にこうも使えるし、ああも使えるし、自分次第でどうとでも捉えられる」ってきっと思えないんだよね。
ヒロ
思えないよね!
「なんでここに石があるんだろう。邪魔だな、危険だな」みたいな話になっちゃうから。
リョウ
そうそうそう。これはみんなが「座ってる」。だからこれは「座る石」とか。もし、その石の上に立ったら「悪いこと」みたいになったりするじゃん。
ヒロ
はいはいはい、はい。
リョウ
そこを「いや、フリーなんだよ、この岩」って。
特に、“NOWHERE”にデカい岩がくるんだったら、「この岩見て、何感じる?」みたいな、周辺のコミュニティの人たちを巻き込んだイベントなのか、わかんないけど……できたら面白そうだよね。
自然から遠ざかって久しい人たちが、いきなり山とか海とかに行くってなかなかハードルが高いよなって考えると、そういう感じでここを使ってもらえると、すごいよさそう。
ただ自然好きが集まるだけじゃなくて、自然にそんなに興味なかったけど、少しずつ山が好きになってしまった、海が好きになってしまった。しかも、それがご近所の方々だったりする。みたいなことが起きたりしてね。
ヒロ
いやー!
やっぱり都会に住んでるとさぁ、全てに役割を与えられるわけ、ですよ。子供たちにも役割があるし、我々大人も役割を求められるわけじゃないですか。
でも本当は、その役割にも境界線がないはずで……岩のように。別にテーブルにしたかったらすりゃいいし、座りたかったら座ればいい。俺らだってね、水飲みたかったら飲んで、遊びたかったら遊んで、もの書きたかったら書けばいいわけじゃないですか。
だからそういうのをちょっとでも、なんか感じてもらえたら嬉しいなと思うよねー。その方が楽じゃない。
役割が……ありすぎると、うーん、すこし窮屈さを感じるし。その窮屈さっていうのが、今東京に住んでいる人たちが、ほとんどの人たちが感じていることなんじゃないかなと思っていて。
その役割から離れて、ちょっとこう……自分を自由に泳がせてみるみたいな。まあ大袈裟に言えば、岩「クン」がそれを教えてくれる、みたいな。
リョウ
ふらふらしてていいんだよ、と。
ヒロ
そうそうそうそうそう!
少し大袈裟な言い方にはなるが、俺らは「武器を配りたい」と思っていて。どうやったら毎日を楽しめるか、人生を楽しめるか。別に贅沢しなくても地球っていうものと一緒に遊べるか。
っていうのを手渡していきたいと思っているんだよね。だからこの空間が始まって、そういうことがどんどん起きていったら。
俺がリョウさんをサーフィンに誘うっていうのも、まあー、武器をね、渡すってことだと思うんだけど。板1枚あれば、いくらでも、一生楽しめる。
リョウ
どの海でも。
ヒロ
どの海でも。一生楽しめるから。
そんな感じでね。もちろん、それはサーフィンとか釣り竿だけの話じゃなくて、フライパンかもしれないし、紙とハサミかもしれないし。いろんな武器があって。それをこう、みんなで、毎日を楽しみに、明日を楽しみに、海山川を楽しみに生きるっていう輪が広がってって欲しい。
リョウ
……その一方で、派手なDJのイベントとかもやって欲しい(笑)
ヒロ
はいはいはいはい。承りました(笑)
リョウ
「あそこ、あの箱ヤバイ」みたいな感じで……。SANUに関わっている人もそうだし、まあ、ヒロとかゲンが個人的に知っている人たちも含めて、面白い人、多いじゃん。
で、その集団がぐちゃっと一気に集まれる場所って、実はあんまりないじゃん。この人とはご飯行く、遊ぶとかはあるけど。その「繋がらなさ」みたいなものをごちゃっとしたら、新しいものが生まれる場所になるんじゃないかなって。
ヒロ
いやーそれをやりたいねえ。
ブランドというものを考えるふたりじゃないですか、我々。ブランドっていろんな側面があると思うんだけど、俺はやっぱロックだと思うんですよ、ある種の。
なにかを作るって、今まで世の中に無いから作るのであって、今まで世の中に無いものを作ったら、やっぱりそこに波紋が生まれるし、なにか既存のものに対するこうアンチテーゼなのか、壊していく姿勢なのか、調整みたいなものが含まれてる……じゃない?
で音楽とか映画とかもそうで、いわゆる僕ら自然を愛するブランドだけど、ただ「いい子」に、自然のことだけ勉強し続けてても、社会は変わらないと思っていて。
そういう意味で、音楽も映画も、挑戦的なことをどんどんやっていきたいし、流していきたいし、コラボしていきたいし。やばいエッジーなイベントも打っていきたいんだよね。
リョウ
ロックが体現するアンチテーゼとかも含めて、そういう発信はあるよね。
ヒロ
だから、ぞくっとするようなイベントやりますよ。……時々ね。やりまくるとちょっと、みなさんにご迷惑をかけるかもしれないから(笑)
リョウ
一回やりまくってみたらいいんじゃない(笑)? やりまくって、で、「迷惑だよ」って言われたら……。
ヒロ
あはははは! そうだよね(笑)。ごめんねって。
「これ、リョウさんに言われたんだ」って言うわ。
ふたりとも
(大爆笑)
リョウ
いや、余計なことを言いました(笑)
Text: Yuria Koizumi , Photo: Yikin Hyo