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Hello, we are "NOWHERE”. vol.2

全3回にわたって、ブランド、建築、食、コーヒーなどさまざまな領域からプロジェクトに関わるプロフェッショナルたちが「これから、ここで何が始まるのか?」についての構想や妄想を語らう本企画。

今回は、NOWHEREの食のシーンを担う、ONIBUS COFFEE代表の坂尾篤史さん、SANBARCO代表の大上良輔さんにお話をお聞きします。


vol.2 素材とローカル、自然とヒトが自由にフュージョンする場所

地球を愛する人々が集うラウンジ、“NOWHERE”。そこに集う人の数だけ自然への向き合い方があるならば、互いの姿勢を尊重したい。そう考えるふたりはかたやサーファー、かたやパーマカルチャーに親しむ人。自然と人との関係性に、正解はありません。自分らしい関わり方で、自然と付き合っていく。“NOWHERE”という場所を起点に、そんなことをあらためて考えさせられました。


Speaker (Right side) : 坂尾篤史
ONIBUS COFFEE代表。世界中のコーヒー農園を積極的に訪れ、トレーサビリティとサステナビリティを重視したカフェ運営を行なう。SANU Founder / Brand Directorの本間貴裕(ヒロ)とは旧知の仲。

Speaker (Left side): 大上良輔
タコスとナチュールワインの店「SANBARCO」オーナーシェフ。良い波を求めて青島(宮崎県)へ移住、同店をオープン。同上、本間とはサーファー仲間。


———— 素材そのものを尊重する姿勢を感じる場所(坂尾)

©︎Yo Tashiro

大上

篤史さんとヒロさん(本間)って本当に仲良しですよね。ヒロさんが篤史さんのことを大好きなのがよくわかりますし、しかも、いまや仕事のパートナーっていうのもめちゃくちゃ素敵です。

坂尾

「なんか一緒にやろうぜ!」というタイミングはこれまでに何度もあったものの結局全部流れてしまったんです。それもあって、“NOWHERE”での出店は二つ返事でした。

大上

ようやく念願が叶ったというか。

坂尾

ブルーボトルから引き継ぐ場所ですし、「他のコーヒー屋に譲るくらいならうちがやりますよ」って気持ちもあったかもしれません(笑)

大上

僕も、話をいただいてすぐに「やります!」って返事しました。ヒロさんと会ったのは3回くらいでしたが、迷いもなく。

坂尾

ヒロの魅力と、勢いにやられちゃったわけですね(笑)

大上

そうかもしれません(笑)

大上

まず「地球の質量を感じる」ってコンセプトがいいですよね。自然の中で遊んでいなければ出てこない言葉だなと。聞いた時、ヒロさんが伝えたいイメージが頭の中でぱっと浮かびました。深いところで瞬間的に「理解」ができて、ビジョンを共有できたことに僕自身、結構ぐっときたのを覚えています。

ヒロさん曰く、今回のコンセプトでもある、「質量」っていうのは、雪山に降り積もる雪の重さや、海でパドリング(サーフボードに乗った状態で、水を腕でかき分けること)する時に感じる海の抵抗のことだそうです。

坂尾

そこから連想して、メインのモチーフに石を選ぶのがまたSANUらしい。自然素材を採用することって飲食店の内装においてはハードルがかなり高くて、なかなか実現できないものです。

たとえばカウンターを土で作る提案をすれば、「土がぼろぼろ崩れてくるからNG」みたいな反対意見が入る。「それがいいじゃないか! その土感を味わいつつ、こぼれた土は片付ければいいだけでは?」と僕なんかは思いますが、一般的にはやっぱり扱いやすさが重視されるものです。

大上

その点、NOWHEREは素材そのものの「荒さ」をそのままにするというか、人間の都合を中心にした空間じゃない気がします。飲食店の空間に巨石が登場するなんてまず聞いたことないですから。

坂尾

自然素材の扱いにくさに注目するんじゃなくて、素材そのものを尊重する姿勢を感じますよね。このスタンスで飲食店を作るって本当に珍しいこと。NOWHEREが始まってからも大事にしていきたいスピリットです。

———— 毛色の違ういろんな自然好きが
NOWHEREでフュージョンしたら
どうなっちゃうんだろう?(大上)

坂尾

出店にあたって、SANBARCOはどんな準備をしていますか?

大上

リアルな話をすると、ミーティングを重ねるごとに、「やるって言ったはいいけど、実際のところやばいかも」と思っています(笑)

サーフィンのメッカである青島海岸すぐ近くに店を構える「SANBARCO」では、メキシコのバハ・カリフォルニアをはじめとする本場ローカルの食文化を尊重しながら、宮崎県下である小林のスイートコーンや日南のカツオなどを使った地元食材を活かしたメニューを豊富に提供する。こだわりのナチュールワインが料理を引き立ててくれる。 SANBARCO 提供写真

大上

メニューはようやく半分固まってきたかな、というところです。まず、うちのシグネチャーであるタコスはやっぱりはずせません。日本の食材をちゃんと使いながら、メキシコの伝統製法に倣ったタコスをお出ししたいなと。

で、ちょっと話が飛ぶんですけど、僕、いまだに宮崎にいるのって旅気分なんです。いい意味で環境に慣れなくて。

坂尾

旅気分、ですか。

©︎Yo Tashiro

大上

出身の札幌を出て、そこからメキシコ、アメリカ、インドネシア、種子島を経て宮崎に来て、もう10年経つんですよ。

それでも晴れた日に海に行けば、「宮崎って本当に最高だな!」って心の底から思うんです。それと同じように、宮崎産の野菜に対しても「このトマト、本当に美味いしいな!」って感じで、ずっと感動し続けていて。この気持ちを忘れたくないですし、それをいろんな人に知って欲しい。

ゆくゆくは東京周辺の産地や農家さんを回って、その土地の旬の食材を食べてもらいたい気持ちもありますが、まずは美味しく楽しい店を目指してメニューも含め準備していきたいと思います。

坂尾

なるほど。突き詰めるとコーヒーも農作物だから、素材のシンプルな味のまま表現したい気持ちはよくわかります。

大上

タコスで無理やり季節感を出すのもかっこいい。だけれど、ちょっと僕のイメージするタコスとは違います。タコスはタコスとして提供しつつも、その季節ならではのフレッシュな食材を使ったサラダやパスタをしっかり作れたらと。

©︎Yo Tashiro

大上

そういうわけで僕はまだまだ考え中ですが、ONIBUS COFFEEは、今回なにか特別に考えていることってあるんですか?

坂尾

全然ないです。敢えて言えば、いつも通りってことですかね。いつも通り、「こんな場所ができてよかったな」と思ってもらえる場所になればいいなと。

特別なコーヒーを淹れるとか、オリジナルブレンドを作るとかの「特別なプレゼンテーション」と「近所にあって嬉しいコーヒー屋」の間に、相関関係は無い。僕自身はそう考えています。

「万人のために」という語源をもつポルトガル語“ONIBUS(意:公共バス)”を冠するコーヒーショップ「ONIBUS COFFEE」。バス停からバス停へと人を繋ぐ、日常に溶け込んだコーヒーを届けることをコンセプトに掲げる。世界中の農園へオーナー自ら赴き、吟味した豆の個性を活かしたコーヒーを提供。豆本来の味を尊重し、必要以上の焙煎はしない。ONIBUS COFFEE 提供写真

坂尾

むしろ、特別なことをすればするほど「遠ざかっていく」気がして……。あくまでも僕らの場合は、ですけれど。

大上

ああ、すごく腑に落ちます。

料理も重ねれば重ねるほど「違う味」になる一方で、食材本来の美味しさからは離れます。だから僕もあんまり手を加えません。意識的に「抜く」。メキシコのチレを少々散らすだけでとんでもなく化けるんです。素材そのもので十二分に美味しい宮崎の野菜は特に。

坂尾

いかに真実でいくか、ってことですよね。

コーヒーも同じです。豆そのものの味わいにはレンジがありますが、深煎りにすると、どこの産地の豆も、高い豆も安い豆も、全部同じ苦さになってしまいます。でも本来的に酸味の質は豆によって全然違う。土地に根付く菌や、風土によって育まれる豆の品種によって、発酵具合には自然な差がでるものですから。それならば、極端な話、美味しくなくても素材の味のままがいい、と思います。

大上

本来の味をいただく、と。

坂尾

そうです。するとひと粒のコーヒー豆からいろんな豊かなものが見えてくるんですよ。土、水、空気、森、そして、それらを包括する自然の生態系まで……。

ONIBUS COFFEE 提供写真

坂尾

その意味で、僕も「自然が好き」だなと思います。良輔さんやヒロみたいにサーフィンをしたり、山登りをしたりする人たちとはまた違うベクトルで。

大上

「自然が好き」って言葉ひとつにもいろんなニュアンスがあるってことですよね。

僕とヒロさんはアクティビティを通じて、篤史さんとヒロさんは自然に対する本質的なスタンスを通じて、「自然」に向き合っている。どっちも自然好きであることに代わりないですから。

坂尾

そうかもしれません。そう考えると、NOWHEREも、自然に対していろんな考えやスタンスを持つ人が集まる場所になったらいいですね。

大上

確かに。自然への向き合い方もそうですが、東京と地方のいい関係性を感じられる場所っていうのもいいなと。

たとえば宮崎には、国内外で活躍する人や、メディアに出なくても本質的に潔く素敵な生き方をしている人たちがたくさんいます。社会的にはアウトローに見えても、腹を決めてサーファーとして生きているような、自分にとって「めちゃくちゃリスペクト!」な人もいます。そうした地方のプレイヤーにとって、NOWHEREが東京という心理的にはちょっと遠いところの、安心できる活動拠点になったら相当嬉しいと思いますし、東京に住む方々にも響き、共鳴し合い、「新しい何か」が生まれる……そんなお金に変えられない体験ができる場所として、機能していけば良いと思います。

 ©︎Yo Tashiro

大上

そうやって集まってくる人の中には、篤史さんみたいにパーマカルチャーに興味がある人もいて。そうやって毛色の違ういろんな自然好きがNOWHEREでフュージョンしたらどうなっちゃうんだろう?って。これまた期待しちゃいますよね。

坂尾

どれだけの深度で自然と向き合っているか?とかは関係なく、自然を軸にしたバラエティーの豊かさを知る機会になりますね。僕自身も、そういう方々に会えるのはすごく楽しみです。

Text: Yuria Koizumi , Photo: Yikin Hyo


SANU NOWHERE

都市の真ん中、ここは地球を愛する人々が集う場所
This is a place where those who love the earth gather.

2024年9月7日(土)、東京・中目黒にオープン.

Instagram @sanu_nowhere